※個人情報に関する部分は編集しております。

2006年8月23日

大阪医科大学附属病院
病院長 竹中洋 殿

質問状

1、はじめに

 私・ヨシノユギは、2003年から大阪医科大学付属病院の精神・神経科(ジェンダークリニック)に通院し、「性同一性障害」の診断を受けた。その治療の一環として、2006年5月20日、形成外科において乳房切除手術を受けたが、当初の説明とは異なり、左縫合部の全壊死・右縫合部の一部壊死という結果になり、現在も難治性皮膚潰瘍治療のために通院を続けている。長らく倫理委員会・判定委員会の決定を待ち、FTM事例の一例目として臨んだ今回の手術には並々ならぬ思い入れと期待があり、この結果によってもたらされた精神的な苦痛、外貌の醜状によって起こる不利益は計り知れないものである。
 また今回の手術から退院、また壊死の判断に至るまでの病院側の対応には疑問を感じざるを得ない点が多々あった。その疑問を解消すべく、7月24日のジェンダークリニック運営委員会に出席し、幾つかの質問に対する回答を得たが、その内容を充分なものとして受け取ることはできなかった。今後治療を継続していく上でも、充分な情報を得なければ安心して通院を続けることが困難である。そのため、質問状という形式で改めて質問を行いたいと考える。然るべき診療科・医師等に問い合わせを行い、検討を行ったのち、病院長としての責任ある回答を求めたい。


2、病院側の対応

 私が入院して手術を受け、壊死と診断されるまでに、以下のような問題点があったと考える。

  • 入院当日まで、確定した手術費用を知らされていなかったこと

  • 病棟と医事課の連携ができておらず、入院手続きまでに長時間待たされたこと

  • 事前の外来診療で少なくとも2度説明されていたものとは別の術式を、手術前夜に打診されたこと

  • インフォームドコンセントでは「手術にかかる時間は1時間半から2時間程度、出血量は100cc程度」と説明されていたにも関わらず、実際の手術時間は4時間20分、出血量は350ccと大きな乖離があったこと

  • 事前のインフォームドコンセントで少なくとも3度、術後に口頭で2度、電話で1度、壊死の危険性を確認し、その度に壊死のリスクはほぼ否定されていたにも関わらず壊死が起こったこと

  • 退院後、心配があれば電話連絡をと言われていたが、問い合わせの際、執刀医の形成外科A医師と直接連絡が繋がったことは一度もなかったこと

  • 術前/術後通して、精神的なケアを一切受けられなかった(精神科主治医のB医師は、私が入院したことすら知らされていなかった)こと

  • 私、ヨシノユギに同意なく、診療中に主治医以外の医師が出入りしたこと

  • 壊死の診断を行った形成外科・C医師が、「壊死しても皮膚を移植すれば良いから深刻になることではない」という、無根拠かつ問題の重大性を無視したドクターハラスメントと取れる発言を行ったこと



3、質問事項

 上記の点を踏まえて、以下の質問事項についての回答を求める。

    3−1、乳輪の壊死の原因について
     

  • 壊死一般について、どのような原因が考えられるか。

  • 本件壊死の原因として考えられるものは何か。

  • その根拠となる医学的所見は何か。


    3−2、インフォームドコンセントについて
     

  • 本件手術について、術前のインフォームドコンセントは充分なものであったか。

  • 実際の手術時間/出血量/切除範囲が、事前の説明と大きく異なっていることを鑑みて、本件手術におけるインフォームドコンセントは、本来の役割を果たしたものと考えるか否か。 

  • 壊死のリスクについて、主治医から「殆ど想定しなくてよい」「リスクとしては限りなく少ない」という説明を複数回に渡って受けたが、それは適当なものであったか。 

  • 全身麻酔後に、術前に行ったデザインを変更して切除範囲を変えたが、切除範囲の変更にはインフォームドコンセントによる事前同意が必要ではないのか。また手術後に、「切除範囲を変更した」という報告が行われるべきではなかったか。


    3−3、術式及びその変更について
     

  • 大阪医科大における乳房切除の術式は、どのような判断によって決定されたのか。

  • その判断は、患者の満足度、生活の快適度など、当事者の利益に配慮されたものであったのか。埼玉医科大等の先行する事例を検討した上でのものであったか。

  • 本件術式よりリスクの少ない術式があり得たか。

  • 本件術式は、私、ヨシノユギにふさわしいものであったか否か。そのように判断する理由は何か。

  • 本件手術では手術前日に術式の変更を提案されたが、そのような行為を妥当と考えるか。

  • 本件手術では、全身麻酔後、切開部分のデザインを変更して切除部分を広げることとしたが、このような変更は患者の同意なしに行えるものなのか。手術続行の判断をした理由は何か。

  • 切除部分を広げることに伴って、リスクの変動があったか。

  • 事前の説明における手術時間/出血量/切除範囲と、実際の手術時間/出血量/切除範囲には乖離が生じているが、その理由は何か。何故、より正確な内容を予想することができなかったのか。

  • 術前/術後の説明を通じ、執刀医からは一貫して「簡単な手術だった」「一般的な形成外科医であれば執刀可能」という見解が示されていたにも関わらず、壊死という結果を引き起こしたことについてどう考えるか。


    3−4、術後管理について
     

  • 本件において、術後管理の方法、回数は必要十分であったか。 

  • 外来診療の際、「治りが悪い」「抜糸が遅れる」という主治医の見解が示されたが、その後も週1回通院の指示が変わらなかったことは妥当か。

  • 壊死が認められた場合、どのような処置が考えられるか。

  • 本件における処置は適正であったか。

  • 適切な術後管理が行われた場合に乳輪の壊死が避けられた可能性はあったか。


    3−5、今後の治療方法について
     

  • 本件の場合、乳輪再建は可能か。どのような方法が考えられるか。

  • 再建をしなかった場合、外貌にはどの程度の痕跡が残るか。

  • 再建を行った場合、外貌にはどの程度の痕跡が残るか。

  • 皮膚移植による乳輪再建を行う場合、その費用、その後の経過にかかる期間はどの程度か。

  • 入れ墨による乳輪再建を行う場合、その費用、その後の経過にかかる期間はどの程度か。


    3−6、ジェンダークリニックの組織実態と、本件への対応について
     

  • 本件手術にあたって、乳房切除手術の経験がある形成外科医が1人という、ジェンダークリニックのメンバー構成が適当なものであったと考えるか。その理由は何か。

  • 乳房切除の手術経験が20例程度の医師が執刀医になり、中心的な役割を果たすことは適当であったか。

  • ジェンダークリニック内で、本件手術における精神科と形成外科の情報共有はどのように行われていたのか。その方法を適当と考えるか。

  • 術前/術後通じて、精神科によるケアを一切受けることができなかったが、何故このような事態が起こったのか。ガイドライン第3版における「身体的治療と精神的治療の連携」を、どのように実質化していく方針を持っていたのか。 

  • 精神的ケアの不在によって起こった不利益は、ジェンダークリニックの連携ミスによるものと認めるか否か。

  • 本件壊死の原因究明をどのように行う予定か。

  • 入院から壊死の診断、現在までの対応を通じて、病院側として自認する問題点は何か。

  • 入院から壊死の診断、現在までの対応を通じて、私、ヨシノユギに対して何らかの損害を被らせたと考えているか否か。その内容とその理由は何か。

  • 入院から壊死の診断、現在までの対応を通じて、どの点について病院側の責任を認めるか。また私、ヨシノユギに対して、その責任をどのように表明し、対応するつもりがあるか否か。



 以上の質問事項に対し、病院長の責任に基づき、9月8日までに文書での回答を求める。
 文書送付先は以下。

〒60X-XXXX     
 京都市(後略)
 ヨシノ ユギ
 090-XXXX-XXXX


 大阪医科大学附属病院における私の個人情報は以下である。

氏名:(略)    
ID番号:4−(略)
 

 なお本質問状については、正確かつ誠実な回答を求めるため、関連の医師や機関に問い合わせを行うことが必要と考えるが、その際の個人情報の管理は厳重に行うことを要請する。また回答にあたっては、本質問状の提出によって、私がいかなる不利益をも被らないことを病院長として約束し、保障することを重ねて要請する。

以上


2006年8月13日作成
  〈署名〉